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2022年3月4日 日経新聞 37面 首都圏東京
町民のおよそ2人に1人が高齢者の町で、さまざまな社会課題を「とよのんコンシェルジュ」というスマホアプリで解決する試みが始まろうとしている、という記事を読んで、博報堂勤務時代に母子手帳のお仕事をしていた時のことを思い出しました。
博報堂が制作する母子手帳と、ドコモと共同開発した母子手帳アプリ。アナログとデジタルのサービスをセットで提供する仕事でしたが、なかなかうまく行きませんでした。
今日は、自治体ごとに取り組むサービスの功罪について、勝手な目線で、勝手な解釈をご紹介します。
目次 とよのんコンシェルジュ 母子手帳と母子手帳アプリ ハードは支給、利用料金も負担 行政がビッグデータを取得する意味 LINEを使えるシニアを増やそう |
とよのんコンシェルジュ
大阪府豊能町が導入するのは、独自のスマホアプリ「とよのんコンシェルジュ」。
町民一人ひとりがメールアドレスやパスワードを設定して個別のアカウントを作成してアプリにログインすると、町内で活用できる様々なサービスがまとめて確認できる。 例えば「移動」というボタンをタップすれば、「タクシーを呼ぶ」「自転車を借りる」などの選択項目が現れ、タクシー配車やシェアサイクルなど自分に必要なサービスが簡単に利用できるようになる。「健康」の分野では、1日の歩数を確認できたり、高齢者が自身の体調管理をできるようになったりすることを想定している。 |
ここまで読んで、多くの人は、何の違和感も抱かないと思います。ですが、ワタクシは、違うんです。
とよのんコンシェルジュを「独自」で開発している、というところが引っかかるんです。
もちろん、行政が住民の暮らしを良くするために、その街ならではのサービスを提供すること、そのこと自体になんのデメリットもないと思います。
ですが、この手のアプリ開発には、それなりのコストがかかります。あと、アプリを作った後の運用の方が大変です。作れば、終わりではない。
母子手帳と母子手帳アプリ
ワタクシが博報堂に勤務していたころ、一般社団法人親子健康手帳普及協会の理事という立場で、日本中の自治体に母子手帳(親子手帳)と母子手帳アプリを販売するという、大変貴重な仕事の経験をさせていただきました。
博報堂DYグループの「親子健康手帳」「母子健康手帳アプリ」が 芦屋市にダブル採用された理由とは?
この仕事では、自治体とのお仕事について、さまざまなことを学びました。
そのうちの一つ「多くの自治体では、住民に提供するサービスについて、基本的には、そのまち独自の特徴を出していきたい」ということでした。
すべての日本人がもつ母子手帳。これは、自治体がその町の税金で制作、購入。そして、住民に無料で配布しています。
ミッキーやミッフィーが表紙に掲載されている母子手帳が人気なんですが、独自のデザイン、中身にこだわる自治体も多くありました。
手帳の中身は、そのほとんどが、厚生労働省がページ構成も含め、ガチガチに定められているので、自治体の自由度はあまりないにもかかわらず、こだわりが強い自治体が多くありました。
その理由のひとつは、前例主義。
これまでずっと、この手帳を使ってきたんだから、変える必要がない。だから、去年と同じものを作って、買って、配ればいい。
何度も足を運んで、博報堂が制作する親子手帳の良さを伝えても、暖簾に腕押しだったことを、思い出しました。いやー悔しかった!
担当した翌年、紙の手帳だけでは突破できないことから、別部署で同時に開発していたデジタルサービス(母子手帳アプリ)との掛け合わせでセールスしたところ、いくつかの自治体で採用してくれることになりました。
本当に、嬉しかった!この場を借りてお礼を申し上げます。
採用にあたって、さまざまな調整をしていただいたことと思います。本当にありがとうございました!
我々が提供していた母子手帳アプリは、NTTドコモと共同開発して、共通のプラットフォームの上で、自治体ごとの特徴を出す、という仕様でした。
自治体:開発費を負担することなく、年ごとの利用料だけで、運用できる。 利用者:転居などしても、行った先の自治体で同じプラットフォームサービスを利用していれば、データを引き継げる。 |
自治体、利用者双方に、明確なメリットがありました。
それでも、採用していただける自治体の数が増えず、苦労したことを思い出し、今回のこの豊能町でサービスを普及させようと頑張っている方のことを思うと、とにかく「頑張ってください!」と応援したい気持ちで、山々です!
ハードは支給、利用料金も負担
高齢者、スマホ。でグーグル先生を検索していると、昨年の敬老の日の東京都渋谷区の取り組みのニュースがありました。渋谷区の取り組みは、スマホをライフラインとして、活用している事例です。
敬老の日に高齢者の区民へスマホを無料配布。利用料も区が負担、スマホ教室も開催するなど、手厚いサポートを行なっています。
渋谷区は、これほどのコストを払って、なぜこのような過剰なサービスを住民に提供するのか、勝手に想像してみました。
行政がビッグデータを取得する意味
渋谷区とKDDI、高齢者1700人にスマホ2年間無料貸与--デジタルデバイド解消へ
渋谷区は、「LINE」を活用した区民への情報配信や防災アプリといったデジタルサービスの提供を進めているが、65歳以上の高齢者4万3000人のうち約25%がスマホを保有しておらず、普段からデジタルサービスを十分に活用できていない現状があるという。これにより、災害時に避難情報がリアルタイムに届かないといったリスクも想定できると説明する。 オンライン申請などの非接触型サービスも推進しているが、活用できる人と活用できない人の間で生じる恩恵の格差“デジタルデバイド”の解消が喫緊の課題となっている。 |
ラストワンマイルならぬ、ラスト25%シニア。ですね。
住民みんなが情報端末を持って、使いこなしてくれれば、行政の社会コストをもっと低減できる。2年間の実証実験という立て付けで始まったこのサービス。全国の自治体からも注目を集めているんじゃないでしょうか。
もちろん、このサービスの裏側には、以下のような意味合いもあると思います。
ここで収集した情報は、高齢者へ最適化したサービスの提供や、潜在的ニーズの把握、区の新規施策、既存事業の見直しと改善などにも活用するとしている。 |
実は、こっちが本命だったりして。
LINEを使えるシニアを増やそう
最後に、再生回数139万回(22/3/4時点)のこちらの動画をご紹介します。
1時間以上もあるので、ぜひ、1.5倍速でご覧ください。笑
この記事を読んで、高齢者にスマホを持たせようと思った方、特に行政の方にお願いです。
端末の価格が安いからといって、アンドロイドスマホを持たせるのは、絶対にやめてください。笑
2022年3月現在、高齢者にとっても使いやすいスマートフォンは、圧倒的にiPhoneだと思います。*もちろん、個人の感想です。
今日も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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