7月31日(金)18時から、太郎坊ベース(滋賀県東近江市)にて IMA-JUKU Real Vol.09 を開催しました。テーマは「AIマイツールのススメ」──全社に同じ1つのツールを配るのではなく、一人ひとりが自分の仕事に合わせてAIを持つ、という考え方です。
今回は初めてご参加の方が3名。そこで当日は、いきなりツールの操作に入るのではなく、まず「いまAIがどこまで来ているのか」の地図をお渡しするところから始めました。自分の現在地が分からないまま道具を持っても、使いどころが見えないからです。
前半:生成AIの現在地(2026年7月)
総務省が今年公表した情報通信白書の数字を軸に、現在地を3つの角度から確認しました。
1. 「一度試して、そのまま」がいちばん多い国
日本で生成AIを使ったことがある人は 58.8%。約6割です。ただし世界と比べると、アメリカとドイツが75.6%、中国は93.6%。
差がもっと出るのは頻度のほうでした。ほぼ毎日使っている人は、日本が29.9%、アメリカは47.9%。 つまり日本は「一度は開いてみたけれど、それきりになっている人」がいちばん多い国だということです。この「知っている」と「使えている」の間の谷を、今日1本だけ渡ろう、という導入にしました。
2. まだ「文章」しか使っていない
用途別で見ると、文章をつくるのに使う人は 55.0%(前年度は24.0%。1年で2.3倍)。一方で、画像や動画をつくるのは16.3%(前年度7.5%)、音声を使うのは6.5%(前年度4.2%)。
文章の使い方は一気に広がったのに、それ以外はほとんど手つかずです。ここは裏返せば伸びしろで、とくに中小企業が得をしやすいのは画像と音声だとお伝えしました。チラシや告知の絵を毎回外に頼めない規模の会社が、方向性だけでも自分で出せるようになる。打ち合わせを録っておいて議事録にする、という使い方も、劇的に効くのに100人に6人しかやっていません。
3. 使ってはいる。でも、仕組みになっていない
会社としてはどうか。日本企業で何か1つでも業務にAIを使っている割合は 86.4%(前年度55.2%)。数字だけ見れば、もう普及しているように見えます。
ところが同じ調査で、業務の変え方について「組織的な取組はない」と答えた企業が 27.0%。アメリカは1.4%、ドイツ4.9%、中国2.6%ですから、この差は際立っています。方針を定めている企業は大企業で約56%に対し、中小企業は約34%。中小機構が今年3月に公表した調査では、中小企業のAI導入率は20.4%、検討中が18.6%でした。
この数字は「制度をどう整えるか」の話にもつながるのですが、今回は会社の仕組みづくりには踏み込まず、まず一人が使えるようになるところに的を絞りました。個人が動けていないのに、制度だけ先に決めても回らないからです。
3つの変化
そのうえで、この1年の変化を3行に絞ってお渡ししました。
- 「聞く」から「任せる」へ — レシピを教わるのか、料理を作ってもらうのか。少し前までは、AIに文章を書かせて、それを自分でデザインツールに貼り込んでいました。いまは資料そのものが返ってきます。同じAIでも、手を動かすのが自分かAIかで別の道具になります
- 文字から、声・絵・紙へ — 録音、写真、PDFの束。きれいに整えてから渡す必要はなく、手元の「面倒な素材」がそのまま入口になります
- 個人技から、自分のやり方を覚えさせる段階へ — 以前は毎回ゼロから頼んでいたので、上手に頼める人だけが上手に使えました。いまは言い回しや手順を覚えさせておけば、次からは「あれ、やって」で済みます
3つ目については、この日投影していたスライドそのものを例にしました。あの資料もAIが作ったもので、ページ番号の位置や見出しの整え方といった「こちらのやり方」を覚えているから、毎回説明しなくてもあの形で出てきます。
あわせて、現実的な話も2つしました。
料金は3階建てで考えると判断しやすいこと。まず試すなら月1,400円ほどのコースから、今日お見せしたような「任せる」使い方をするなら月3,000円ほど。1日あたり100円で、月に1時間以上ラクになるなら迷う必要はないという判断基準です。年払いの割引には乗らず、月額を選ぶこともお伝えしました。乗り換えが利くほうが、この変化の速さでは得だからです。
リスクは2つだけ。個人情報やマイナンバーのように入れないものを先に決めておくこと。そしてAIは知らないことも自信たっぷりに書くので、確かめる係を人間に残すこと。確かめ方の実際として、ChatGPTの答えをClaudeに見せて検証させる「セカンドオピニオン」の手や、記事の事実確認を専用の手順として登録してある例をお見せしました。日付の間違いは今でもよく出ます。
後半:課題を持ち寄って、その場で解く
ここからは、こちらが聞く側にまわりました。質問はひとつだけです。
「先週、いちばん時間を食った作業はなんですか」
何の作業か、1回何分×月に何回か、そして何がしんどいのか。この3点を、お一人ずつ挙げていただきました。困っていることが先、道具は後という順番です。
出てきた課題は、お仕事の内容がまるで違うのに、「本業ではないのに毎回そこそこ時間を取られる作業」に集まりました。
- 手作業の二重入力 — 同じ内容を複数の管理表に書き写している。1件あたり20分ほど
- 告知物のデザイン — 案内チラシを自分で作ろうとして何度もやり直し、結局よその方にお願いすることになった
- SNS投稿の継続 — 写真を選び、構成を考え、文章を書くのに毎回30分から1時間かかり、続けられない
いずれも、会社の売りではないけれど、誰かがやらないと止まる仕事です。
その場で、手を動かしてお見せしたこと
挙がった課題に沿って、実演しました。
しゃべるだけで、たたき台ができる。 チラシの課題に対して、イベントの内容を音声で伝えるだけで、タイトル案・構成・申し込み方法までを含んだ骨子が出てくる様子をお見せしました。ポイントは、AIに完成品を求めないことです。まず粗く出させて(この日は「ポン出し」と呼んでいました)、そこから人が直す。ゼロから自分で作るより、直すほうがずっと速い。SNS投稿も同じで、構成をAIに出させてから手を入れます。
転記は、そもそも人がやらなくていい。 二重入力の課題には、書類のデータを読み取らせて管理表側へ流す形をご提案しました。判断が要らない写し取りは、人が持つ理由がありません。
自分仕様に育つ。 AIに「自分について」を覚えさせておくと(職業、仕事の進め方、よく使う言い回し)、返ってくる精度が変わります。過去のやりとりが積み上がるほど自分に寄っていく、という実際をお見せしました。
資料が、動画になる。 スライドから、ナレーション付きの解説動画を自動で組み立てるところまで実演しました。近い将来、自分の声で読ませることもできるようになります。
コツはどれも同じでした。仕事を丸ごと渡さず、ひと工程だけ渡す。 判断が要るところは人が持ち、「誰がやっても同じ作業」から先に渡していきます。
結論:AIは道具ではなく「分身」
最後にお伝えしたのは、AIをもう一つの脳として扱う、という考え方でした。
自分の知識や考え方を覚えさせていけば、それは自分の思考を残してくれる存在になります。人は忘れるし、一人でできることには時間の限りがある。移動中に思いついたことを声で預けておけるだけでも、動ける量は変わります。苦手な作業をそちらに寄せていけば、本来やりたかったことに時間を使えます。
ただし、AIは育てないと育ちません。 人を育てるのと同じで、使いながら一緒に伸びていくものだ、というところに着地しました。
そのための具体的な次の一歩として、この日は2つお伝えしました。AIをきちんと使える環境(PC)を持つこと。 そして予定をAIが読めるようにしておくこと(Googleカレンダーへの移行)。今回はお手元にPCがない方もいらしたので、まずはここからです。
太郎坊ベースについて
会場の太郎坊ベースでは、簡単な食事をご用意しています。学びのあとは、そのまま懇親の時間へ。今回も、実演を見て浮かんだ疑問をその場で持ち寄っていただきました。遠方の方には、IMA-JUKU宿泊者限定で、翌朝に長命寺温泉「天葉の湯」をご案内する特典もあります。
参加者の声
アンケートを実施しています。集計でき次第、本記事に追記します。
次回開催予定
IMA-JUKU Realは、毎月1回、金曜日に開催しています。次回Vol.10の日程は調整中です。決まり次第ご案内します。
「AIは知っているけれど、自分の仕事のどこに効くのか分からない」という段階の方こそ、いちばん変化が出ます。ご関心のある方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください(紹介制・定員6名)。
ご参加ありがとうございました。