生成AI導入にいくらかかる?──費用の相場と失敗しない予算の組み方
こんにちは、ステップアウトマーケティング代表の今宿裕昭です。
「生成AI導入って、いくらくらいかかりますか?」
支援の相談を受けるとき、最初にこの質問をされることが多い。
答えに詰まる質問です。なぜなら「何をゴールにするか」「誰が使うか」「どこまで自社でやるか」で、費用が10倍以上変わるから。
でも、曖昧な答えを返すのはフェアじゃないので、今日は正直に相場をお伝えします。
大前提として、2つの誤解を先に解いておきます。
**「生成AI導入は高い」は誤解です。**ChatGPTのようなツール自体は月数千円から使えます。
**「タダで始められる」も誤解です。**ツール費がゼロでも、社員の学習コスト・定着のための時間コストは必ず発生します。「無料で試した」で終わってしまう会社が多いのは、この見えないコストを考慮していないからです。
本当の費用を理解するには、3つの層に分けて考える必要があります。
費用は「3層構造」で捉える
第1層:AIツール自体の費用(月額サブスク)
まず、ツール費です。代表的なサービスの月額を整理します(2026年2月現在)。なお、料金は為替や各社の価格改定で変わるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
| サービス | 月額(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| ChatGPT Plus | 3,000円/人 | 個人利用向け。日本円ローカライズ済み |
| ChatGPT Business(旧Team) | 3,900〜4,650円/人 | 年次契約3,900円・月次契約4,650円。データが学習に使われない |
| Claude Pro | 約3,000円/人 ※ | 長文処理・論理思考に強い。ドル請求のため為替変動あり |
| Google AI Pro(旧Gemini Advanced) | 2,900円/人 | Google WorkspaceやGmailとの連携が強み |
※ Claude ProはUSD $20/月のドル請求。1ドル=145〜155円の為替変動によって実際の支払額が変わります。
社員5人でChatGPT Businessを年次契約で使うなら、月約2万円程度から始められます。
ここだけ見ると「安い」と感じるかもしれません。でも、ツール費は氷山の一角です。
第2層:社内の人的コスト(見えないが最も大きい)
生成AIを「業務で使えるようにする」ために必要な社内の時間コストです。
- 使い方を学ぶ時間:人によって数時間〜数十時間
- プロンプトを試行錯誤する時間:最初の1ヶ月は特に多い
- 業務フローを見直す時間:今までのやり方を変える設計が必要
- マニュアル・テンプレートを整備する時間:組織に定着させるための作業
これを時給換算すると、小さな会社でも初期3ヶ月で30〜80万円相当の社内コストが発生することが多い。
多くの会社が「ChatGPTを入れたけど誰も使わなくなった」という結果になるのは、第1層しか見えていないからです。ツールを買うことと、使えるようにすることは別のコストです。
第3層:外部支援費用
外部のコンサルタントや研修会社に頼む場合の費用相場です。
| 支援の形態 | 費用相場 |
|---|---|
| スポット相談(1〜2時間) | 1〜3万円 |
| 研修・ワークショップ(半日) | 5〜15万円 |
| 月次顧問(月4〜8時間) | 5〜15万円/月 |
| 伴走支援(3〜6ヶ月) | 月15〜30万円 |
「外部支援は高い」と感じる方もいますが、第2層の社内コストを下げることが目的です。正しい伴走支援を受けると、「試行錯誤に使う時間」が大幅に短縮できるため、結果的に安くつくことが多い。
ケース別の導入費用シミュレーション
3つのパターンで整理します。
パターンA:まず自社で試す(月2〜3万円)
ChatGPT Team(5人):月1.9万円
社内研修:社員の自己学習(社内コストのみ)
外部支援:なし
合計:月2万円程度
このパターンの現実:定着率が低い。3ヶ月後に「使っているのは1〜2人だけ」という状態になりやすい。「とりあえず試す」には良いが、組織全体への導入は別の設計が必要。
パターンB:外部支援と組み合わせる(初期50〜100万円)
ツール費:月2万円
初回研修(半日×2回):20〜30万円
伴走支援(3ヶ月):月15〜20万円 × 3ヶ月 = 45〜60万円
初期総費用:65〜90万円程度
僕が最もよく提案するパターンです。3ヶ月で「使える仕組み」を社内に作り、その後は自走してもらう。初期投資はかかりますが、定着率が高く、中長期的なコストは下がります。
パターンC:業務システムに組み込む(数百万円〜)
業務システムへのAI組み込み開発:100〜500万円以上
API費用(月次):利用量による
保守・運用:月5〜20万円
社内の特定業務をAIで自動化したい、独自のチャットボットを作りたい、という場合です。明確なROI(投資対効果)が試算できる場合のみ検討してください。「なんとなくシステムを作る」は失敗の典型です。
補助金を活用すると実質負担が下がる
費用の話で必ず触れておくべきなのが、補助金です。
IT導入補助金(経済産業省)
クラウドサービスやITツールの導入費用に使えます。2025年以降の制度では、ChatGPTやCopilotなどの生成AI活用ツールも対象になっているケースがあります。
- 補助率:1/2〜3/4
- 上限:申請区分によって異なる(最大450万円のものも)
申請は認定ITベンダー経由が必要ですが、補助金対応の支援者と組めば手続きが大幅に楽になります。
小規模事業者持続化補助金
マーケティング活動全般(Webサイト改修、チラシ制作、展示会等)に使えます。生成AIを使ったコンテンツマーケティング施策の費用も対象になる場合があります。
- 通常枠:上限50万円、補助率2/3
- 特別枠:上限200万円
補助金を目的に導入を決めるのは順番が逆です。「この業務課題を解決するためにこの支援が必要で、補助金が使えれば費用負担が下がる」という順番で考えてください。
「高い買い物」になる失敗パターン
費用をかけたのに成果が出ない、よくある失敗を4つ挙げます。
失敗①:ツールを買っただけで終わる
「まずChatGPT Teamを全社員に入れよう」という動きをよく見ます。入れること自体は良いのですが、使い方の設計・研修・定着フォローがなければ、3ヶ月後に「使っていない」ボタンになります。
失敗②:いきなりシステム開発を発注する
「AIチャットボットを作りたい」「自社のデータで学習させたい」という話が先行して、数百万のシステム開発を発注するケースがあります。試行錯誤もなしに大きな開発を始めると、「完成したけどニーズと合わなかった」というリスクが高い。
まず既成のツールで小さく試して、ニーズを確認してから開発に進むのが正しい順番です。
失敗③:研修だけで終わって定着しない
「半日の研修を実施した」という報告で終わる会社があります。研修翌日から現場で使えるようにするには、業務フローへの組み込みと、使い始めの試行錯誤のフォローが必要です。研修は「スタート」であって「ゴール」ではありません。
失敗④:補助金のために目的を曲げる
「補助金が使えるから、このITシステムを導入しましょう」という提案を鵜呑みにするケースです。補助金はあくまで費用を下げる手段。補助金ありきで導入するものを決めると、使いにくいシステムを抱えることになります。
費用対効果の考え方
生成AI導入の費用対効果を試算するときの考え方を整理します。
効果の数え方
- 削減できた業務時間 × 人件費単価 × 月数
- 例:月20時間削減 × 時給2,500円 × 12ヶ月 = 年間60万円の効果
費用対効果の判断基準
- 初年度:費用 < 効果であれば合格ライン
- 2年目以降:ツール費のみになれば大幅黒字
「生成AIを入れて月10時間の業務削減ができた」という話は、中小企業の現場では十分にリアルな数字です。年間にすると120時間分の人的コストが浮く。これが50〜60万円相当なら、初期の外部支援費用と相殺できます。
今日からできる予算設計のチェックリスト
- 解決したい業務課題を1つ特定した
- その課題が解決されたとき、月何時間の削減が見込めるか試算した
- ツール費・社内人的コスト・外部支援費の3層で予算を考えた
- 最初は小さく試して、成果が出てから拡大する順番を確認した
- IT導入補助金・持続化補助金の申請可能性を調べた
- 「補助金があるから導入する」ではなく「課題があるから導入する」になっているか確認した
まとめ:正しい順番で小さく始める
生成AI導入の費用は、「何をゴールにするか」で大きく変わります。
でも、どんな規模・目標であっても、正しい順番があります。
- 業務課題を特定する(何を解決したいか)
- 小さく試す(既成ツールで効果を確認)
- 定着させる(業務フローに組み込む仕組みを作る)
- 拡大する(成果が出たら横展開・システム化を検討)
この順番を無視して「いきなり大きく」動くことが、高い買い物になる最大の原因です。
月2万円のツール費から始めて、成果が出れば外部支援に投資する。それで十分です。
費用と効果の試算、一緒にやりましょう
「自社の場合、いくらくらいかければ何が変わるか見えない」という方に向けて、30分の無料壁打ちを行っています。
業務課題の整理から、費用対効果の試算まで、一緒に整理します。「投資するかどうか決めるための相談」でも構いません。
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