こんにちは、ステップアウトマーケティング代表の今宿裕昭です。
最近、いちばんよく聞かれるのがこれです。
「今宿さん、毎朝noteとMV作ってるけど。それって、どうやってるの?!」
たしかに、自分でも変なことをやっている自覚はあります。毎朝、日経新聞の一面トップ記事を1本選んで、それをnote記事に書き、さらにその記事から楽曲を作り、ミュージックビデオまで仕上げて、X・Instagram・YouTube・TikTokに展開し、Spotifyなどの音楽配信にまで載せる。これを、ほぼその日のうちに、一人でやっています。
聞くと「どんな大所帯でやってるんですか」と思われるのですが、答えは「一人です」。正確には、たくさんのAIを、まるで広告代理店の各部署のように使い分けている。これが種明かしです。
この記事は、その全工程の公開です。「どうやってるの?!」に、スパッと答えられるようにまとめました。

全体像──「1本の記事」が「歌」になるまで
先に流れだけ示すと、こうです。
- 日経一面を俯瞰する … その日の紙面全体を見て、一面トップを主役に文脈を読む
- note記事を書く … リサーチ・執筆・ファクトチェックを別々のAIに担当させる
- 記事を「動詞ひとつ」に削る … その日の経営の決断を、一語の動詞に凝縮する
- 楽曲をつくる … 動詞をテーマに、歌詞を書いてAIで作曲する
- MVをつくる … 歌声に同期して、文字と画像が動く映像を書き出す
- 全SNSに分解する … 1つの素材を、各チャネルの形に作り替える
- 配信する … 音楽配信サービスに載せて、世界中で聴けるようにする
ひとつずつ、何をやっているかを開きます。
工程1:日経一面を「俯瞰」する
スタートは毎朝の日経新聞です。といっても、一面トップの記事だけを読むのではありません。その日の紙面全体にざっと目を通し、複数の記事のあいだに流れている『文脈』を読むようにしています。
ただし、軸はあくまで一面トップ。日経が「今日はこれを一面に置いた」と決めた記事を主役に据えて、紙面全体はその背景・補助線として使う。ニュースの寄せ集め要約にはしない。ここが、ただのまとめ記事との分かれ目です。
記事本文は、AIに自動で取得させています。「今日の一面は何か」「本文はどう書かれているか」を、毎朝同じ手順で手元に引き込むところから一日が始まります。
工程2:note記事を「3つのAI」で書く
ここが、いちばん人の手間に見えて、いちばんAIに任せている部分です。
僕は記事を一人で書いているようでいて、実際には役割の違う3つのAIエージェントを順番に動かしています。
- リサーチ担当 … 記事の背景、関連データ、出典を集める。数字には必ず出典URLを付けさせる
- 執筆担当 … 集まった材料と、僕が決めた「今日の切り口」をもとに、経営者に刺さる文章に書き上げる
- ファクトチェック担当 … 書き上がった記事の数字・固有名詞・引用を1件ずつ検証する。出典に実在しないデータ(AIがもっともらしく作る『嘘の統計』)を撃ち落とす
かつて広告会社で、プランナー・調査・コピーライター・校正が分かれて回していた仕事を、AIの分業で再現しているイメージです。速さと正確さを両立させるために、あえて一人のAIに全部やらせない。これが品質の肝になっています。
そしてもうひとつ大事にしているのが、ここでの僕自身の役割です。AIが3つ動いても、「どんな角度で、誰に、何を届けるか」を決めるのは僕。切り口を決め、AIの出力に違和感があれば突き返す。ここだけは、人間にしかできません。
工程3:記事の核を「動詞ひとつ」に削る
記事ができたら、次はその記事をたった一語の動詞に凝縮します。
これは僕が続けている音楽プロジェクト「StepOut Music」のルールで、テーゼはこうです。
決断とは、動詞をひとつ選ぶこと。
経営の判断は、最後はいつも動詞に行き着きます。「握る」「引く」「積む」「届く」「直す」――その日の記事が訴えている経営の決断を、ひとつの動詞に削り出す。それがそのまま曲のタイトルになります。動詞が立たない日は、無理に作りません。
記事という「論理」を、動詞という「芯」に落とす。この作業が、長い文章を歌に変えるための蝶番(ちょうつがい)になっています。
工程4:楽曲をつくる
選んだ動詞をテーマに、歌詞を書きます。記事の中で読者に届けたかったメッセージを、もう一度、歌として届けられる言葉に翻訳していく。
作曲と歌唱は、生成AIのSunoを使っています。サウンドは、シリーズの途中からアシッドジャズに固定しました。毎作スタイルがバラつくより、「StepOut Musicといえばこの音」という背骨があったほうが、シリーズとして積み上がるからです。
ここでも、ただAIに丸投げするわけではありません。歌詞のどこを攻めるか、どの一行で聴き手に「膝を打たせる」か。記事と同じで、判断の部分は人間が握っています。
工程5:MV(ミュージックビデオ)をつくる
曲ができたら、映像です。StepOut MusicのMVは、派手な実写ではなく、歌声に同期して文字(タイポグラフィ)と画像が動くミニマルな作りにしています。
工程はこうです。
- 歌声を解析する … AIで歌詞のどの言葉が何秒に歌われているかを1語単位で割り出す
- 画像をつくる … 各場面の背景画像を画像生成AIで用意する
- 映像を書き出す … 自作のレンダリングエンジンで、歌詞と画像と数字を、歌に合わせて動かす
- 仕上げる … 色味を整えて、YouTubeに公開できる1本の動画にする
「歌声と文字をぴったり合わせる」ところは、人の手でやると気の遠くなる作業ですが、ここはほぼ自動化しました。機械にやらせるところと、人が決めるところを、はっきり分けている。これが毎朝続けられている理由です。
工程6:全SNSに「分解」する
1本のMVと記事ができたら、それを各SNSの形に作り替えます。これはコンテンツ・アトマイゼーション(1つの素材を、チャネルごとの最適な形に分解する)という考え方です。
- X … 記事の核を、リーチ用・信頼用・集客用の3本に書き分ける
- Instagram / Facebook … 縦型の短い動画クリップに切り出す
- TikTok / YouTube ショート … 縦型・短尺で、ニュース性のある切り口を前に出す
- Spotify Canvas … 楽曲ページで流れる数秒のループ映像
ここでも決定的な部分(動画の縦変換など)はスクリプトで自動化し、コピー(言葉)の部分は、その曲・その記事を読み直して毎回書き起こす。テンプレ流用で凡庸にしない、というのが自分なりのこだわりです。
工程7:音楽配信に載せる
最後に、楽曲をDistroKidという配信サービス経由で、Spotify・Apple Music・Amazon Musicなど各種の音楽配信に載せます。これで、毎朝の一面記事から生まれた曲が、世界中のどこでも聴ける状態になります。
AIで作った楽曲であることは、隠さず正直に開示しています。ここを誤魔化すと、後で全部が崩れるからです。
かつてと、いまの違い
ここまで読んでいただくと、冒頭の図の意味が伝わると思います。
僕は博報堂で29年間、広告の仕事をしてきました。当時、こうした「企画して、書いて、作って、出す」という一連を回すには、各部署に分かれた何十人が、数週間から数か月かけて、数百万から数千万円の規模で動くのが当たり前でした。
それと近いことを、いまは一人で、AIを武器に、朝のうちに回しています。コストはAIツールの月額くらい。場所も、すべて自分の手元(ローカル)で完結します。
僕はこれを「マーケティングエンジニア」と呼んでいます。AIを武器に、これまで大企業しか手にできなかったマーケティングの規模と質を、一手に動かす人。その力を、中小企業のために使いたい。毎朝のnoteとMVは、その生き方そのものの実証実験です。
(この職種の定義は、別の記事マーケティングエンジニアとは何かで詳しく書きました)
使っている道具
よく聞かれるので、主な道具立ても載せておきます。
- Claude Code / Codex … 文章の制作補助、各種スクリプトの実行、自動化の土台
- Suno … 作曲・歌唱
- AIDesigner / Higgsfield … MVの背景画像(画像生成)
- Whisper … 歌声と歌詞の同期(音声解析)
- 自作のレンダリングエンジン … 歌詞同期のMV書き出し
- DistroKid … 音楽配信
どれも特別なものではありません。違いがあるとすれば、これらを『部署』のように組み合わせて、一日の制作ラインとして毎朝回していること。道具そのものより、組み合わせ方と続け方が肝です。
あなたの会社でも、一部は再現できる
「毎朝MVまで」は極端な例です。でも、この仕組みの一部は、どんな会社でも持ち込めます。
たとえば「毎日のニュースから、自社の視点でひとことコメントを書く」だけでも、AIを使えば一人で続けられる。それを積み上げれば、半年後にはあなたの会社の立派なメディアになっています。企画から発信までを分業せずに、一気通貫で回せる時代が、もう来ているということです。
「うちの会社だと、どこから手をつけられる?」――そういう相談を、毎週月曜の夜8時から1時間、オンラインの「マーケティングエンジニア・ラボ」でざっくばらんに受けています。テーマは自由、お酒を飲みながらでも構いません。僕も大好きなハートランドを片手に参加しています。気になる方は、のぞいてみてください。
毎朝の一面が、夕方には歌になっている。その全工程を、これからも公開していきます。
