生成AI活用

中小企業のAI導入、「使えてる会社」と「止まった会社」の決定的な違い──博報堂29年の視点で読み解く

中小企業の52.4%がAI導入の方針すら決めていない。一方で、10万円未満の投資で効果を実感している企業は100%。博報堂で29年間マーケティングに携わった視点から、「使えてる会社」と「止まった会社」の違いを、データと実例で解き明かします。

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今宿 裕昭

今宿 裕昭

ステップアウトマーケティング合同会社 代表|元博報堂 29年

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こんにちは、ステップアウトマーケティング代表の今宿裕昭です。

博報堂に29年間いました。広告の仕事は「伝える」仕事だと思われがちですが、本質は違います。「届くかどうか」を決めるのは、中身ではなく構造です。

同じ商品でも、伝え方の構造が違えば売れ方がまったく変わる。CMのクリエイティブが良くても、メディアプランがずれていれば届かない。逆に、素朴な表現でも、届け方の設計が正しければ成果が出る。

AI導入もまったく同じだと、最近強く感じています。

ツールの良し悪しではなく、導入の構造が成否を分けている

データを見ると、その構造がはっきり見えてきます。


半数以上が「方針すら決めていない」

東京商工リサーチが2025年7月に実施した調査(6,645社回答)によると、中小企業で生成AIを「会社として、あるいは一部部門で活用推進している」のは23.4%。大企業の43.3%と比べて約20ポイントの差があります。

しかし、もっと深刻な数字があります。

中小企業の52.4%が「方針を決めていない」。

「導入して失敗した」ではないんです。始めてすらいない。

大企業で「方針未定」は36.5%。この16ポイントの差は、ツールの差でも予算の差でもありません。


「使えてる会社」の3つの共通点

では、AIを使えている中小企業には何があるのか。

静岡県のIT企業サンロフトが2025年7月に111社を対象に行った調査(BuddieS)が、面白い結果を出しています。

1. 社長が自分で触っている

この調査で最も印象的だったのがこの数字です。

経営層がAIを「十分理解している」「基本知識がある」企業の効果実感率は95.5%。

経営層が「あまり理解していない」「全く理解していない」企業では50.0%

倍近い差です。

PwCの2025年春の調査(AISmiley)でも、大企業対象の調査ではありますが、同じ構造が見えます。「期待を上回る効果」を得た企業のうち、約6割が「社長直轄で推進」していた。期待未満の企業では、同じ体制は1割未満。

社長が「やっといて」と言う会社と、社長が自分でChatGPTを触る会社。この違いが、すべてを決めている。

2. 10万円未満で始めている

同じサンロフトの調査に、直感に反する数字があります。

10万円未満の少額投資で始めた企業の効果実感率は100%。

10万円以上投資した企業は80%。

予算をかけるほど効果実感度が下がる。逆転しているんです。

これは博報堂時代の経験と重なります。広告でも「予算が大きいキャンペーンほど成功する」とは限らない。むしろ予算が大きいと関係者が増え、意思決定が遅くなり、尖った企画が丸くなる。

AIも同じです。大きな予算でコンサルを入れて全社導入するより、社長がChatGPTの月額20ドルを払って、自分の業務で試すほうが、よほど定着する。

3. まず1業務だけに絞っている

BCGの2024年の調査(BCG Japan)によれば、AI導入企業の71%がパイロットプロジェクトのまま止まっている。全社展開できていない。

一方で、うまくいっている企業は「全社展開」を目指していません。

1つの業務で、目に見える成果を出している。

山形県の建設会社・後藤組は、2025年2月に全社員向け生成AI勉強会を実施した後、各部門で活用を進めました。DXセレクション2025グランプリを受賞し、人時生産性は前年比**+37%、残業時間12%削減**(PR TIMES)。

大正15年創業の建設会社です。IT企業ではない。

訪問看護の世界でも同じことが起きています。eWeLLが提供する電子カルテ「iBow」は、生成AIで看護計画書の作成を自動化しました。1件15分かかっていた作業が3分に短縮eWeLL公式)。

利用しているのは、全国の中小規模の訪問看護ステーション。従業員10人以下の事業所が大半です。

どちらも「全業務をAI化」したわけではありません。1つの業務のペインを、AIで解決した。 そこから広がっている。


「止まった会社」の3つの共通点

逆に、止まっている会社にも共通のパターンがあります。

1. 「専門人材がいない」で思考が止まる

東京商工リサーチの同調査で、AI活用を推進しない理由の第1位は**「推進するための専門人材がいない」55.1%**。

気持ちはわかります。でも、この理由は構造的におかしい。

ChatGPTを使うのに、AIエンジニアは要りません。プロンプトを書くのに、プログラミングスキルは要りません。「専門人材が必要だ」という思い込みそのものが、最大の障壁になっている。

BCGの調査では、従業員の4分の1以上に生成AIトレーニングを実施した企業はわずか6%。人材がいないのではなく、育てる気がない

後藤組は、全社員に勉強会を開いて自分たちで始めました。外部のAI専門家を常駐させたわけではありません。

2. 「何に使えるかわからない」まま探し続ける

2025年版中小企業白書(中小企業庁)によれば、生成AI導入の懸念事項で最も多いのが**「効果的な活用方法がわからない」**。

これも博報堂時代の経験と重なります。

クライアントから「何かいい広告を考えてくれ」と言われることがありました。「何か」が一番困る。課題が定義されていなければ、解決策は出しようがない。

AIも同じです。「AIで何かできないか」と漠然と考えている間は、何も始まらない。

「毎月の請求書処理に3日かかっている。これを半日にしたい」。 こう言えた瞬間に、AIの使い道は決まります。

3. ツールは入れたが、業務の流れは変えていない

McKinseyが2025年に発表したレポート「Superagency in the Workplace」は、AIで高い成果を出している企業の共通点としてワークフローの再設計を挙げています。ツールの導入ではなく、業務プロセスそのものを変えた企業が成果を出している。

多くの企業は、既存の業務フローの上にAIツールを乗せただけで終わっています。

それは、手書きの伝票をExcelに転記しているのと同じです。道具は変わったが、やり方は変わっていない。

AIの効果は、業務の流れを変えたときに初めて出る。


これは「広告の問題」と同じ構造である

29年間、広告の現場で見てきたことがあります。

広告が効かない会社には共通点がある。 商品が悪いのではない。ターゲットが間違っているのでも、予算が足りないのでもない。

「広告を打てば売れる」と思っている。

広告は魔法ではありません。広告が機能するのは、商品と顧客の間に正しい文脈がつくられたときだけです。

AI導入もまったく同じです。

「AIを入れれば変わる」と思っている会社は変わらない。

AIが機能するのは、業務の課題と解決策の間に正しい文脈がつくられたときだけです。

そしてその文脈をつくれるのは、現場を知っている経営者だけです。


まとめ──3つの数字が語っていること

使えてる会社 止まった会社
経営者のAI理解度 効果実感率95.5% 効果実感率50.0%
初期投資額 10万円未満で100%が効果実感 高額投資ほど実感率が低下
推進体制 社長直轄が約6割 社長直轄は1割未満

データが示しているのは、こういうことです。

AIは、道具の問題ではなく、経営者の問題である。

社長が自分で触り、1つの業務に絞り、小さく始める。

それだけで、使える側に回れます。


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